もともと高血圧ぎみで、他にも疾患を抱えていたものの、長い一人暮らしで変なこだわりが増え、病院や施設などを利用する事に対して、拒否反応を示していた義理の父、口だけは達者な70代。
そのため、私たち夫婦は毎週義父のもとへ通い、食事や買い物の支援を行っていました。
どんなに仕事が忙しくても、一人暮らしの義父の我儘に、朝から晩まで付き合いました。
毎日の食事が不安だったので、宅配弁当を利用しても、ひと月も経たぬうちに「まずい」の一言で止めてしまったり、本人が美味しいと思える味に出会わない限り、外食しても「まずい」の連発で、お店の人に顔向けできなく、恥ずかしい思いもたくさんしました。
認知症の症状が出始めたため、ヘルパーや行政の助けを受けようとしましたが、他人が家に入る事を嫌がるため、それならショートステイはどうかと提案しても、「年寄りばかりじゃ」と聞く耳持たず。
そうなのです、自分もその年寄りの一人とは思っていないのです。
自分の現実を受け入れられないとでもいうのでしょうか、老いを肯定する事ができないため、他者を攻撃する事でしか満足しないとでも言いますか。この反応も、認知症のせいだったのかも知れません。
出来ない事が増えさらにガンも患った事で、ようやく現状を受け入れたようにも思います。
ガンは高齢が幸いして進行が遅く、手術はせずに薬と定期的な検査で済んだので、本格的に認知症の対策をするべく、ヘルパーさんや行政の担当者さん、地域包括支援センターなどの担当者さんなどと話し合い、私たち夫婦と共に見守る体制を作る事になりました。
日中はヘルパーさんが食事や掃除などをして下さるので、心配事はある程度軽減できました。
とは言え、毎週通って様子を見る生活は変わらず。
買物や温泉へ連れて行ったり、とにかく顔を見せる事で精神的に安心していられるように努めました。
こうして落ち着いた状態を保ちつつ、施設探し・キャンセル待ちと並行して、来るべき入院・施設入居について、義父に提案を持ちかけたりもしました。「こっちの方が安心するよ」と言いつつ、態度が軟化するのを待って入居を勧めようと思っていたのです。
ところが緊急入院をする事になり、病院併設の施設が上手い具合に空きがあるという事で、入居の手筈を整え、病状回復を待ちました。
病院は一ヵ月ほどで退院できる事となり、義父はそこで親切にしてもらったのが嬉しかったのか、併設の施設への入居にもすんなり納得してくれました。ヘルプしてくれる担当者が同じだったというのが、一番の安心材料となったようです。
その時、義父は要介護3。だいぶ大変な状況でしたが、ヘルパーさんや行政の担当者さんの力を借りて、長い遠距離自宅介護状態を無事に経る事が出来ました。
入居にあたっての高額な準備費などは不要で、これも助かりました。
毎月の費用は約20万。
別途病院などの治療費もかかります。
安くは無いですが、私たちの時間を少しでも確保できた事は、本当に有難く。
義父も次第に柔らかい表情となり、季節の行事なども積極的に参加して、楽し気に過ごしていました。本当に入居する事ができて良かったです。
嫌がっていた頃は、将来どうなるのかと不安でもありましたが、緊急入院という災い転じて福となす事が出来たと思います。
長い自宅介護状態で、私たちの負担も相当でしたので、義父が楽しそうにしている姿を見る事が出来て、ヘルパーさんや介護にあたって下さった皆さんの優しさが、この結果と導いて下さったと感謝しています。
どんな方が担当になるかでも変わるかもしれませんが、ヘルパーさん・行政担当者さんと、きちんと連携を取れていたのも良かったと思いますので、これから介護をはじめる方には、とにかくよく話し合う事と、相手の気持ちを慮る事、施設の状態をよく見る事など、ありきたりではありますが、検討されると良いと思います。